事例紹介
Case Study
IOTデータを活用したサービス創出支援
IoTデータを活用したサービス創出支援を行った事例をご紹介します。センサーデータは取得したが、そのデータをビジネスに活かす方法でお困りの企業様のご参考になるかと思います。サービスの製品化までは長い道のりとなりますが、初期の段階として支援してご提供できたもののご紹介となります。
クライアント業界・業種
建設、不動産
クライアントが置かれていた状況
- 会社全体としてIoTの推進が命題になっていた。IoTを活用したサービスの創出したい。
- センサーデータ自体は取得済みである。
クライアントが抱えていた課題
- サービスの創出とデザイン:センサーデータ自体はとっているが、どのように活用すれば良いのか分からない。
- 取り組みのための仮説:取得したセンサーデータの分析を通じて、サービスとなる候補を特定できるのではないか。
- ただし、具体的にどうすればどうしたらいいのか分からない。
課題に対する解決方法
- IoTにおける顧客満足とは何かを定義し、この定義を起点とし、課題解決を進めた。
- 「センシングから自動的に機器を制御し、居住者の満足(快適になることの満足・快適をキープ)を得ることである」とした。
- 取得済みデータとそのデータを取得したデバイスを参考にし、居住者の行動や感情の仮説を洗い出した。次に、それら仮説をもとに、サービス案を検討した。サービス案自体を現状のデータやデバイスのみで実現可能か分からないため、サービス案自体を成り立たせるためのさらなる仮説を設定し、データを用いて検証を行った。なお、当初の前提としては「万人に当てはまるような自動制御の実現」を前提としており、この前提の検証自体も行った。さらには、サービス創出と実現性に向けて各種文献の調査を行い、検討の必要な仮説の確認や、浮き彫りになっていない課題があるかどうかを確認した。
成果
大きく、2つの視点からの成果が考えられる。一つは、新たなサービスの特定できたかどうか。もう一つは、それらサービスを実現するにあたっての課題を特定し、課題解決に向けての筋道を作れたかどうか。
- さまざまなサービス案を特定できた。実際には、サービス実現にあたり、課題を具体的に特定できたことに大きな成果がある。たとえば、部屋にいるのかいないのか、といった居住者の行動の自動検知は、難しいことが分かった。これが検知できないと、いるいないを元に、居住者に快適性を提供する様々なサービスは、実現できない。
- 前提としておいていた「万人に当てはまるような自動制御の実現」も、現実的ではないことが分かった。我々の結論としては「個人の感情や感覚を、その人に合わせてチューニングするしかない。人によって感情や感覚のしきい値が異なるため、特定の感情や感覚に対する標準値を用いる方法では、個々に最適なチューニングはできない」ということである。たとえば、温度を最適化がそのような例として考えられる。これら個人のチューニングに対するアプローチとして、機械学習での最適化が一つの答えとなる。
- 文献調査により、サービスの品質を高めるために必要な要素も特定できた。たとえば、快適な照度を提供する場合にも、光源の色温度が影響するため、両者を考慮した上でサービスを実現することが望ましい。
- 副次的な成果として、職人の経験を文献による調査データで裏打ちできた。企画側と技術側の認識齟齬が少なくできる効果が見込める。
今後の展望
いずれもデータに関わる取り組みである。どのような種類のデータを、どのような粒度で取得するのかが、サービス化にあたって検討事項となる。
- 判明した課題を解決するには:たとえば、居住者の在不在のステータスを検出するには、データの追加が望ましい。不十分なデータからの推測が避けられ、サービス品質の向上につながる。
- 仮説をさらに出すには:データの計測単位を細かくする。荒すぎる計測単位では、居住者の状態変化が起こっていたとしてもデータ上に現れない。
教訓
- データの粒度と精度が、分析の結果(予測精度)に影響する。センサーデータの活用のためデータをとりあえず集めるにしても、最初の設計が大切になる。テーマを先に決め、そのテーマに即したデータを集める必要がある。
- データの取得や管理にも専門性が求められる。センサーの稼働状況を把握し、データが適切に取得できているかを確認できるような仕組みが必要である。また、センサーの特性(計測範囲や計測単位等)は導入前に入念に把握しておくことが望ましく、センサーの質がサービス化における制約となる。
- 膨大なデータから知見を引き出し、そこからサービス化のアイデアを素早く得るには、データの加工や可視化処理の手際の良さが決め手となる。データ加工の技術を用意しておくことが望ましい。