ノーコードツール活用支援、有効だったのは技術知見以上におもてなし力
- ノーコード・ローコード開発
- 工程の一元管理
- 伴走支援
- 導入事例の概要
- 食の可能性を追求し、水産資源をさまざまな形に変えてお届けしている株式会社ニッスイ。水産・食品・ファインケミカルといった事業をグローバルに展開する、私たちの食卓に欠かせない企業です。今回ニッスイ鹿島医薬品質保証課様では、医薬品の製造・品質情報をデジタルプラットフォームで一元管理する取り組みをスタート。これにより、品質管理のさらなる向上と業務の効率化を実現しました。このプロジェクトは、「食」に対する真摯な姿勢とともに、最新技術を積極的に取り入れるニッスイ様の革新的な一面を体現するものです。分析屋もこの取り組みの一部を担当させていただきました。
Contents
導入背景 ノーコードツールを導入するだけでは進まなかった
― ニッスイ様では、どのような業務課題を解決しようとされていたのでしょうか?
今回の取り組みは、医薬品の製造・品質管理における進捗確認や記録管理をデジタル上で一元化することが目的でした。以前は紙の帳簿に手書きで記録された情報を、必要なたびに各部署まで足を運んで探さなければならず、効率が悪いうえにリアルタイムで情報を把握することも難しい状況でした。人の異動も多く、業務が属人化しやすい体制になっていた点も課題でした。

― そうした課題に対して、まずは社内でデジタル化を進めようとされたのですね。
はい。業務支援ツールがひと通りそろった Microsoft 365 E3 ※ は導入済みだったので、うまく使えば改善できるのではと考えていました。なかでも、SharePointリスト ※ や Power Automate ※ といった機能が使えそうだという認識はありましたが、実際にどう組み合わせれば業務に使えるかは明確でなく、進めあぐねていたのが実情です。
※Microsoft365 E3:WordやExcel、Outlookなどに加え、SharePointリスト・Power Automate・Power Appsなど業務効率化に役立つ多様なビジネスアプリを含んだ法人向けサブスクリプションサービス。
※SharePointリスト:クラウド上で表形式のデータ管理ができるツール。複数人で同時に使えるExcelのようなもの。
※Power Automate:特定の条件に応じて通知やデータ更新などの処理を自動で実行できる「業務の自動化ツール」。

― 社内での対応も検討されたとのことですが、どのような課題があったのでしょうか?
独学でツールの習得に取り組んでいた従業員もいましたが、業務で使えるレベルまで仕上げるには時間も労力もかかり、システム化を実現するのには大きなハードルがあると感じていました。
こうした経緯を踏まえ、以前より相談していた分析屋さんと改めて話し合い、「プロジェクトとして一緒に進めよう」と判断しました。外部にお願いすることでコストはかかりますが、スピード感や得られる知見、従業員の負荷軽減を考えると、それだけの価値があると考えました。
プロセス① やるべきことを解きほぐす、平易なコミュニケーション
― 分析屋とのやりとりの中で、どのように方針が明確になっていったのですか?
最初はSharePointリストを利用し、クラウドで記録を一元管理できるようになれば「帳簿のデジタル化」ができるので十分に価値があると考えていました。
一方で、私たち自身も「製造から品質確認が完了するまでのリードタイムをどう短縮するか」が本来の目的であることは認識していましたが、それをどう実現すればよいかまでは明確にイメージできていませんでした。そんな中、分析屋さんから「入力は PowerApps※ で仕組み化し、さらに PowerBI※ で可視化することで、ネックとなる工程や改善ポイントが明確になるのでは?」と具体的なアプローチをご提案いただきました。
このやりとりを通じて私たちが気付いたのは「業務に必要なのは“記録”ではなく“仕組み”なんだ」という視点でした。
PowerApps でデータ入力をアプリ化すれば、前の工程が終わっていないと次に進めなかったり、入力漏れがあると登録できなかったりと、自然と業務の流れに沿った進行が実現できます。単なる記録ではなく、現場の判断や行動を導く “業務の仕組み” そのものを作るという発想は目から鱗でした。
※Power Apps:Microsoftが提供する業務アプリ作成ツール。プログラミングなしで、業務に合わせた入力フォームや仕組みを作ることができる。
※Power BI:Microsoftが提供するデータ可視化ツール。複数のデータを集約し、グラフやダッシュボードなどで直感的に分析・共有できる。プログラミング不要で、リアルタイムの業務状況を見える化できるのが特徴。

― 理解が深まった背景には、どのようなやりとりがあったのでしょうか?
私たちはシステムに強いわけではなく、最初は専門用語の多さに戸惑っていました。でも分析屋さんは「PowerAppsって、つまりこういうことですよ」と、どんな言葉もかみ砕いて丁寧に説明してくれて、こちらが少し前の段階に戻って質問しても嫌な顔ひとつせず、一緒に立ち戻って教えてくれました。
質問しやすい空気を作ってくれていたおかげで、わからないことを率直に相談できる安心感がありました。専門的な知識を前提にするのではなく、まず私たちの理解に寄り添ってくれる姿勢に「おもてなし」を感じました。
プロセス② ニッスイ従業員の目線になって
― その他、おもてなしを感じていただけたポイントなどあれば教えてください。
設計の段階から、分析屋さんは「まるでニッスイ従業員になったかのような」姿勢で関わってくれたと感じています。たとえば今回のプロジェクトでは、ただツールを導入するだけでなく、私たち自身も気づいていなかった業務フローの改善点にまで踏み込んだ提案をしてくれました。
その背景には、業務理解のスピードと深さがあります。こちらから送った大量のPowerPoint資料にもすべて目を通してくださっていて、短い打ち合わせの中でも的確な質問や提案が次々と返ってきて、正直驚きました。
また、各部署の担当者の目線になって業務の全体像を把握しようと動いてくださっていて、そうした積み重ねがあったからこそ、的確な業務フロー提案につながったのだと思います。製造現場で使う「充填」などの専門用語も、すぐに正しく使いこなしてくれていて、こちらの言葉がそのまま通じる安心感がありました。
単に言われた通りに作るのではなく、私たちの意図を先回りしてくれる伴走姿勢におもてなしを感じました。

今後の展望 持続的に事業を続けていくための個々の成長
― 最後に、今後の展望について教えてください。
ニッスイでは現在、短期的な効率化ではなく、持続的に事業を続けていくための“下地づくり”としてDXに取り組んでいます。「やれと言われたからやる」のではなく、現場の一人ひとりが成長しながら、自分たちの手でデジタル化を進めていく。その考え方が、私たちのDXのベースにあります。
そうした取り組みを支えるために、心理的安全性を意識したチームづくりにも力を入れています。毎月の勉強会では、誰もが自由に意見を出し合える環境があり、それが学びや挑戦を後押ししています。
今回のプロジェクトも、分析屋さんが私たちの理解度や実行力に合わせて寄り添ってくれたおかげで、「自分たちでやれる」という実感を持つことができました。今後は、この取り組みを他部門にも広げていきたいと考えています。
まとめ 共創関係によって生まれた納得感
今回のプロジェクトでは、ツール導入や業務設計だけでなく、ニッスイ様と分析屋の間に生まれた“共創”の関係性が、成功の鍵になったと感じています。
ニッスイ様も現場のメンバーが主体となって動く文化を持ち、取材でも率先してご協力いただくなど、おもてなしの精神にあふれた会社でした。その姿勢は、分析屋の「相手に寄り添い、真の課題を読み取る」姿勢と深く共鳴するものでした。
おもてなしは、一方的な思いやりでは成り立ちません。お互いに相手を尊重し合うことで、真の意味での“共創”が生まれます。今回も、その精神があったからこそ、納得感のある成果にたどり着けたのではないかと感じています。
これからもニッスイ様と共に、現場起点の持続的なDXを育てていけることを、私たちも楽しみにしています。